両親が離婚すると思っていた時、母がファービーをナデナデしてドゥッドゥッドゥルドゥした話
みなさんは『ファービー』を知っていますか?
動かしたり触ったりするとアクションを起こしたり、奇声を発する、
愛くるしい見た目の、癒しの『ペットロボット』である。
世界中の方々も、辛い時や苦しい時、ファービーに支えられて過ごしてきた事でしょう。
今回は、当時高校生だったぼくの、そんなファービーの話です。
口喧嘩の絶えない父と母
ぼくが高校生の頃、父と母がよく口喧嘩をしていた時期があった。
理由はおそらく、父が仕事を辞めて収入が無くなった関係だろうか。
日常的に起こる口喧嘩。事あるごとに声を荒げる両者。
当時のぼくは仲裁に入るでもなく、言葉を発さず、ただ、黙ってその場に居るだけだった。
そうして、言い争いが起こる度、このまま両親は離婚するのだろうと諦めていた。
ジョジョ第5部のブチャラティのエピソードを思い出し、離婚後どちらに着いていくか考えていた。
同じ高校に通う友達にも、親が離婚するかもしれないと話した事もあった。
・・・そんな日常的な口喧嘩が続いていたある日の事。
母は、日々の口喧嘩に疲れたのか、ポツリと呟いた。
「赤ちゃん欲しい」
赤ちゃん欲しい
・・・当時の日曜の朝8時半には『おジャ魔女どれみ』というアニメが放送されていた。
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母の発した言葉はおそらく、この作品に登場する『ハナちゃん』という赤ちゃんの影響だ。
母はこのアニメを楽しみにしており、時折感動して涙を流す事もあった。
オープニングの曲はとてもノリが良く、母は口に出してノリノリで歌っていた。
母の「赤ちゃん欲しい」という言葉は、
口喧嘩の日々に疲れた母の心の声で、
「癒しの存在が欲しい」という事だったのかもしれない。
すくすくと育った元気な男の子
「赤ちゃん欲しい」
ソファーに座り、ポツリと呟いた母に目をやると、
ヒザの上には、すくすくと立派に育った約500gの元気な男の子の姿があった。
うなだれた母が、ヒザ上のファービーをゆっくりとナデナデする姿が、そこにはあった。
母の呼びかけに応えるように、ファービーは永い眠りから目を覚ました。
動き出すファービー
「フアー・・・アー・・・。」
大きなあくびで目覚めたファービーは、その場に存在感を示した。
(・・・動き出してしまった。)
ぼくは動き出し言葉を発するファービーに嫌気が差した。
この後の展開にファービーという存在が、良い結果をもたらす事は無いと思った。
口喧嘩は父と母の問題で、それ以外の意見は求められていない。
一時は収まった口喧嘩を、もう、これ以上、荒らされたくはなかった。
それでも、なおも母は、ファービーをナデナデシテいた。
何か言いたげなファービーは、目や口をパチクリさせる動作をした。
その動きは、これまでの状況を察しているかのようでもあった。
「・・・ウィーン、カシャン」
「ウィーン、カシャン・・・」
それは、アナウンサーが本番前にする、顔面体操のようでもあった。
そして、虚をつくように突然、ファービーは奇声を発した。
「ドゥッドゥッドゥルドゥ!!」
「ドゥッドゥッドゥルドゥ!!」
・・・うちのファービーは空気を読むのが下手だった。
・・・このあとのぼくの記憶は無い。
ファービーの首元を横からチョップして「モルスァ」させたかもしれない。
それとも「ヘギョミツ」させてしまったかもしれない。
・・・ただ、この後、両親が離婚する事はなかった。
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