身体の機能を維持するための脂質(脂肪)について【皮膚の健康と必要な脂肪】
5大栄養素の一つ『脂質(脂肪)』についてまとめています。
脂質(脂肪)は身体機能維持に必要なもの
栄養素の一つである脂肪は、栄養学では一般的に脂質と呼ばれます。
脂質は、水に溶けない物質の総称で、脂肪酸やリン脂質、コレステロールなどの事を言います。
脂質は、肉類、魚類、大豆、卵、植物油、ナッツ類、牛乳などに含まれます。
1gあたり約9kcalのエネルギーを生み出し、消費エネルギーの20~30%が摂取目安とされています。
糖質やタンパク質と比べると、倍以上ある効率の良い高エネルギー源です。
そのため、エネルギー蓄積物質として優先的に脂質を蓄積すると考えられています。
脂質の主な役割は、細胞膜の構成成分、ホルモンなどの材料、皮膚の健康維持、体温の維持、衝撃の保護などです。
また、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を助けるなどの働きがあります。
不足すると、脳出血、肌荒れ、便秘、健康障害などが起こります。
過剰に摂ると、肥満などの生活習慣病や動脈硬化などを招きます。
脂肪酸は脂質の構成成分
脂肪酸は、脂質の構成成分で色々な種類があります。
大きく分けると、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つに分類されます。
分類 | おもな脂肪酸 | ||
飽和脂肪酸 | パルミチン酸 ステアリン酸 ミリスチン酸 ラウリン酸 | ||
不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | オレイン酸 | |
多価不飽和脂肪酸 | n-6系 | リノール酸 | |
γ-リノレン酸 | |||
アラキドン酸 | |||
n-3系 脂肪酸 | α-リノレン酸 | ||
DHA(ドコサヘキサエン酸) | |||
EPA(エイコサペンタエン酸) |
例外もありますが、主に、
飽和脂肪酸は常温で固体のもの多く、肉の脂やバターなどに多く含まれます。
不飽和脂肪酸は常温で液体のものが多く、植物油や魚油などに多く含まれます。
n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸は欠乏すると皮膚炎などが発症するとされます。
リノール酸とα-リノレン酸は体内で合成できず、必須脂肪酸とされています。
必須脂肪酸は食べ物からの摂取
リノール酸とα-リノレン酸は体内で合成できず、食べ物から摂取する必要があります。
皮膚の健康維持、学習能力や脳神経系の機能維持などの働きがあります。
ただし、通常の食事においては、必須脂肪酸が不足する事はまず無いようです。
脂肪酸の摂取量目安
- 飽和脂肪酸は、脂質の摂取目安である消費エネルギー20~30%のうち、成人で7%以下が目標とされています。
- n-6系脂肪酸は、成人で1日約10gが摂取目安です。
- n-3系脂肪酸は、成人で1日約2gが摂取目安です。
- 一価不飽和脂肪酸は、生活習慣病の予防、またはリスクが不明のため、目標量は定められていません。
飽和脂肪酸の摂取を多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸)に置き換えた場合、
血中HDL(善玉)コレステロールのわずかな上昇と中性脂肪を下げる効果があります。
体に良い効果が期待できる脂質も多いですが、1gあたり約9kcalなので摂り過ぎに注意しましょう。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、ココナッツオイルやパーム油、豚脂、牛脂、バターなどに多く含まれます。
飽和脂肪酸は、皮下脂肪や内臓脂肪、コレステロールなどの原料になります。
生活習慣病に深く関連することが知られている栄養素であり、
摂取量が増えると、LDL(悪玉)コレステロールが増加し、脂質異常症や動脈硬化などの原因になります。
飽和脂肪酸の摂取を多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸)に置き換えた場合、
血中HDL(善玉)コレステロールのわずかな上昇と中性脂肪を下げる効果があります。
今話題のココナッツオイル
ココナッツオイルは飽和脂肪酸の中でも中鎖脂肪酸を多く含んでいます。
中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸に比べ、早めに吸収されてエネルギーに変わります。
また、脂肪が付きにくいとされ、免疫力の向上、認知症予防などの効果があるとされています。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は、植物性の油や魚などに多く含まれます。
血中コレステロールの低下作用や皮膚の健康維持、脳神経系の機能維持などの働きがあります。
飽和脂肪酸の摂取を多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸)に置き換えた場合、
血中HDL(善玉)コレステロールのわずかな上昇と中性脂肪を下げる効果があります。
オリーブオイルに多いオレイン酸
一価不飽和脂肪酸のオレイン酸は、ベニバナ油(サフラワー油)、オリーブオイル、キャノーラ油、ヒマワリ油(サンフラワー油)、ピーナッツオイル、パーム油、ごま油などに多く含まれています。
飽和脂肪酸と比べて、LDL(悪玉)コレステロール低下させ、動脈硬化の予防になるとされます。
一価不飽和脂肪酸は、生活習慣病の予防、またはリスクが不明のため、目標量は定められていません。
必須脂肪酸のリノール酸
n-6系脂肪酸のリノール酸は、グレープシードオイル、コーン油、大豆油、綿実油、ごま油などに多く含まれます。
細胞膜の成分、ホルモンの原料、血中コレステロールを減らすとされます。
リノール酸は、細胞膜を構成するリン脂質の成分とされ、不足すると皮膚に異常が現れます。
必須脂肪酸のα-リノレン酸
n-3系脂肪酸のα-リノレン酸は、アマニ油、エゴマ油などに多く含まれます。
n-3系脂肪酸は、成人で1日約2gが摂取目安になっています。
皮膚の健康維持や脳神経の機能維持、血中脂肪の低下などの働きがあります。
EPAとDHAは脳機能に良い?
n-3脂肪酸のEPAやDHAは、青魚に多く含まれています。
血液の中性脂肪の低下、脳神経の機能を高めるとされています。
抗血栓作用がありますが、過剰に摂取すると血液が固まりにくくなる恐れがあります。
DHAは学習機能向上に良いとされ、サプリメントや健康食品としても有名です。
トランス脂肪酸はできるだけ低めにする
トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングに含まれます。
また、ショートニングを使用したパンやケーキ、焼き菓子、スナック菓子などにも含まれています。
トランス脂肪酸は、冠動脈疾患の危険性を高めるとされています。
トランス脂肪酸の摂取量は消費エネルギーの1%未満が推奨されています。
さらに、できるだけ低い摂取が望ましいとされています。
コレステロールは脂質の一種
コレステロールは脂質の一種で、レバーや卵、魚卵、肉や魚の内臓類などに多く含まれます。
細胞膜の構成成分、ホルモン、胆汁酸、ビタミンDの原料になります。
ホルモン
ホルモンは、狭義には生体の外部や内部に起こった情報に対応し、体内において特定の器官で合成・分泌され、血液など体液を通して体内を循環し、別の決まった細胞でその効果を発揮する生理活性物質を指す。ホルモンが伝える情報は生体中の機能を発現させ、恒常性を維持するなど、生物の正常な状態を支え、都合よい状態にする重要な役割を果たす。
ホルモンwikiより抜粋
コレステロールは食事によっても摂取されますが、約65%~85%は体内で合成されます。
なお、体内のコレステロールは一定に保たれるように働きます。
そのため、食事からの摂取が多いと合成が減少し、摂取量が少ないと合成が増加します。
コレステロール摂取量がそのまま、血中総コレステロール値に反映されるわけではありません。
不足すると、免疫力低下、悪性腫瘍、脳出血などの可能性があります。
過剰に摂ると、脂質異常症、動脈硬化、心筋梗塞などを招きます。
コレステロールには、善玉や悪玉と呼ばれる2種類がありますが、どちらにも重要な働きがあります。
HDL(善玉)コレステロールの働き
全身の細胞から余分なコレステロールを回収して肝臓に運びます。
LDL(悪玉)コレステロールの働き
肝臓で合成されたコレステロールを全身に運ぶ働きがあります。
HDL(善玉)コレステロールが少なすぎたり、LDL(悪玉)コレステロールが多すぎると、動脈硬化を引き起こす可能性があります。
卵はコレステロール高いので摂り過ぎは良くない?
卵はコレステロールが高いので、食べ過ぎは良くないと聞きます。
ですが、食品に含まれるコレステロールは血中にはほぼ影響しないようです。
ただし、高LDLコレステロール血症患者の場合は、
コレステロールを1日200mg未満+飽和脂肪酸エネルギー比7%未満
にする事が勧められています。
卵の食べ過ぎはエネルギーを摂り過ぎてしまったり、
栄養素も偏ってしまうので、その点の食べ過ぎには注意が必要なようです。
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※本ページは厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」などを元に作成しています。